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2019.01.22

【学内探検】鯉を飼うきっかけは「登竜門」だった【泉の鯉】

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加藤 すみれ(かとう・すみれ)
千葉県在住で現在は人間社会学部心理学科三年の学報委員長。
学報委員会に入ったきっかけは「文章を書くのが好きだから」であり、大学では文芸部にも所属している。趣味は読書とボードゲームと登山。
 昭和女子大学には、キャンパス内に自然豊かな「昭和之泉」があります。今回は、ここで悠々と泳いでいる鯉と昭和女子大学の歴史についてです。

 
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そもそも昭和之泉とは?

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▲自然豊かな「昭和之泉」


 昭和之泉は地下水をろ過した水を使用している泉で、水深40~65cmほどあります。
 この泉には現在150~160匹くらいの錦鯉が飼育されており、泉を見渡すと多種多様な品種を楽しめます。
 鯉たちのために、ろ過機の掃除や噴水・滝を使った水中の酸素含有量の管理、夏場には藻の清掃を行うなど、水質の維持が行われています。


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▲泉にあそびに来たカモと鯉たち

 近年は、春先になるとキャンパス内で生まれたカルガモの姿も鯉とあわせて泉で見られるようになりました。
 2016年3月1日の昭和学報第597号で、泉について取り上げた記事を発見しました。
この「昭和之泉」は1990年に創立70周年を記念して同窓生の寄附も加えて造られた。当時の第2代理事長であり、学長であった人見楠郎先生(故人)が発案し、賛同した同窓生によって計画が進められた。
同年4月号の学報には、人見先生の巻頭言が掲載され、そこには学園創設以来の苦労とともに、70周年を迎える喜びが語られ、その結びで、次のように語っておられる。
「研究に疲れた時にはこの昭和の泉に目を向け、卒業後の人生の旅に疲れた時にもここに来て憩うときに、必ずや新鮮な生命あふれる知恵が授かるとすればこれほどの幸せはあるまい」
こうした人見先生と同窓生の思いが、以前からあった湧き水と結びつき泉の誕生となった。

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▲左奥の白い建物は光葉庵

人見楠郎先生と鯉

 鯉を大学で飼育し始めたのは人見楠郎第2代理事長の頃。人見先生の娘である、現在の人見楷子(のりこ)名誉理事長によれば、以前から学内で犬やモルモット、ヤギなどを飼育していたそうですが、鯉の飼育は中高等部の建物の前に作った小さな池が始まりだったそうです。当時は現在のような鯉の餌でなく、セミの抜け殻を天日干しにしてカラカラになったものを潰して餌としてあたえたといいます。
 鯉の専門家を呼び、色合いの良いものができるようにと分別する、アオサギにやられないようにネットを張るなど、人見楠郎先生は大変鯉を可愛がっていたそうです。
 新潟にある「錦鯉の発祥地」小千谷に娘である、楷子名誉理事長を連れて行くほど熱心に鯉に入れ込んでいたといいます。

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▲エサ場には多くの鯉たちがいる

鯉を飼育するようになったきっかけについて、楷子名誉理事長は当時をこう振り返っています。
「中国文学を専門にした父が、中国に古くから伝わる登竜門の伝説になぞらえたのではないかと思う。竜門の滝を登りきれる鯉が竜になるように、子ども達も元気に育って将来大きく出世して欲しいと願う気持ちを込め天の神様に自分の家に子どもが生まれたのを見せたくて鯉のぼりを立てるようになった……このように学園の幼児・児童・生徒・学生皆が元気に立派に成長するようにと言う気持ちを含んでいたのではないか」。

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▲泉の裏にある滝


また、楷子名誉理事長の妹、棟子(とうこ)さんからもコメントをいただきました。

「東京という大都会の中の限られた広さの敷地で、常に自然の美を大切にすることによって、生徒学生教職員、そして訪れる人々がホッとできる心の憩いの場、癒しの場を作りたいという思いは、戦災や火災から立ち直る度に強くなっていったと(人見先生が)話していたのを思い出します。 とかくコンクリートのビルディングで冷たくなりがちな校舎群の合間合間に緑と自然の生き物たちを大切にすることによって、頭脳ばかりにフォーカスを置くのではなく人間として大切な「心」を育てることを人間教育の要に見据え続けた父の信念が昭和学園のところどころに残されているのでしょう。これからもそれらに意味を見出し続けていただきたいと願います。」

最後に

image7-2▲多種にわたる品種の鯉たち
 昭和女子大学で飼育されている鯉は、白地に赤い模様のある『紅白』のほかに白地に赤と黒の模様が入った『大正三色』『昭和三色』、白や赤の地に黒い模様のある『べっ甲』、背に薄青の鱗のある『浅黄』など、とても多様な品種が揃っています。
 鯉はオスとメスでヒレの形状や体格、性格が異なっており、ヒレが尖っていて体格がシャープなものがオス、ヒレが丸くて体格も丸いものがメスだそうです。こういった鯉それぞれの個性に注目して観察してみるのも楽しいかと思います。


image2-2▲寒いときには温度差の少ない草影でおとなしくしている
 また、その日の気温や水の流れによっても鯉たちはいつもとは違う様子をみせるそうなので、授業の空き時間などに眺めていると癒されること間違いなしです。
 神奈川県足柄郡にある大学施設、東明学林の池やボストン校でも個性豊かな鯉たちの様子を見ることができます。
 この機会に、鯉を通して人見楠郎先生の想いを感じてみてはいかがでしょうか。

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