Hot News
研究
2020.03.11

【研究室訪問】「健康できれいになる」管理栄養学科 小西 香苗 准教授

 昭和女子大学生活科学部管理栄養学科では、管理栄養士の国家試験の受験資格を取得するだけでなく、健康と栄養の関係について総合的に学びます。次世代を担う若い女性の健康について、学生たちを研究に巻き込んで、プロジェクトの形をとって活動している小西香苗准教授の研究室を訪問しました。


image1-1 (2)

最近、「免疫力」という言葉をよく聞きます。

 一般的にいってしまえば、免疫力をあげるとは特別なことではなく、適度に体を動かし、よく寝て、バランスよい食事、ストレスをためない生活を送る、という当たり前のことです。でもそれが全然できてない人が多いんですよね。健康の知識は持っているが、実行できていない人が、どうしたらよい健康行動につながるかにも興味を持っています。予防医学、栄養疫学が専門ですが、病気の原因を突き止めるだけでなく、それを予防につなげる研究も大切だと女子大に来て考えるようになりました。

先生は学生たちの健康作りに取り組んでおられます。

 もともとは、胎内環境(母体の栄養状況や環境化学物質曝露)が子どもの将来にどのような健康影響を与えるかを研究していました。研究の知見から、『食育は胎児期から』と思ってきましたが、近年の研究から『子どもの健康は妊娠前のお母さんの健康から』始まっていることが遺伝子レベルの研究でわかってきました。現在は、妊娠前、妊娠中のお母さんの母体の状況、特に栄養状況が産まれてくる子どもの将来へどう影響するかを研究テーマとしています。
 妊娠前のお母さんの栄養が大事だとすると、調査をして論文を読むだけでなく、日々、目の前にいる女子学生の健康をサポーすることも大切、との思いがプロジェクトを行うきっかけになっています。体組成計は乗るだけで、自身の筋肉量や体脂肪量が分かり、自身の健康を考えるツールとしてとても良いと考えています。とにかく体組成計に乗って、健康管理を行ってもらおうというプロジェクトです。

「For Me」というプロジェクトについて教えてください。

 実は、このプロジェクトは国の研究費「科研費」で行っている研究ベースで始まったプロジェクトです。研究への参加を促すために体組成計に乗ってもらおうと思ったのですが、研究を全面に出すと、学生がひいてしまうので、今では『体組成計に乗って、健康管理』をキャッチコピーにわかりやすいフライヤーを作って健康管理を前面に出しています。学生ホールを通りかかった学生たちに気軽に体組成計に乗ってもらい、体組成計に乗った学生さんの中から、さらに自分の健康に興味のある方に研究協力をお願いして、骨密度や血圧などを測定しています。2019年度の研究参加者は250名余りで、これからデータ整理、解析を行います。今後2年間で1000名を目標として最終解析に持ち込む予定です。
 2019年度は、健康機器メーカーTANITAの活動助成金が採択されたので、測定機器を増やして、来年度は学園祭、各種イベントなどでも体組成測定など健康度測定会を行い、生活習慣を改善するきっかけになればと思っています。
 もともと5年前より、体脂肪を減らして筋肉量を増やす研究ベースのプロジェクト「スマイルプロジェクト」に取り組んできました。体脂肪が多めの隠れ肥満女子に積極的に介入を行うプロジェクトです。LINEグループを使ってヘルシーなランチの写真や歩いた場所の写真を送ってもらったり、週の目標や筋トレ動画を送ったり、スマートウォッチで1日1万歩を目標に歩いてもらったり、健康的な食品選択のためのデータブックを配布して、低カロリーで栄養の多い食品選択をしてもらうように促したりしています。しっかり食べて、とっているカロリーのトータルは変わらなくても栄養価が高く、食べる時間を考え、脂肪がつきにくい生活習慣を学生同士で促し合っています。

先生も参加するのですか?

 はい、1日1万歩を目標に歩いています。パソコンの前にいることも多いので、1限の授業がない日は渋谷から大学まで歩いています。音楽や英語をききながら、35分ぐらいですね。朝から健康的な行動をしたという前向きな気持ちが、さらに1日を前向きにしてくれています。遅い夕食もさけて、分食をとりいれた生活も行っています。
 スマイルプロジェクトには、ゼミ生も含めて50名あまりが毎年参加しています。参加者の隠れ肥満女子には、見た目は普通かむしろ細い人もいます。特に効果の出ている人は、「よく歩く」「間食の質と食べる時間をかえる」「食品の選択をかえる」「遅い夕食をやめる」などを行った人です。解析結果に基づいた効果的な指導を今後も行っていきたいと思っています。

学生の健康意識をどう見ていますか。

 健康よりはダイエットをしてキレイになりたいとの意識が強いと思います。朝食を食べない、夜遅い食事をする、ご飯は食べなくてもスィーツは食べる、動きたくない(運動不足)など不健康な生活習慣が目立ちます。また、貧血や骨密度が低いなど栄養に関する体調不良も気になりますね。見ただけではわからないのですが、精神的な側面も研究では測定を行っていて、学習意欲やセルフエスティーム(自己肯定感)などが健康行動と関連しています。
 私が学生に言っているのは、痩せているからキレイなのではなく、「健康だからキレイ」だということ。同世代の学生目線を大事にして、ゼミ生と一緒に「キレイプラス」という情報提供レターも作っています。女子大生に「自分の健康のために」といっても興味を示しませんが、「キレイになるために」と言うと関心を持ってもらいやすく、行動が健康的に変わりやすく効果的です。プロジェクトを通じて生活習慣の改善だけでなく、学習意欲やセルフエスティームの向上にもつながると良いと考えています。

小さな成功体験で自己肯定感up:講義での取り組み

 講義の中では、「Small Step」という小さな1週間の行動目標を受講票に書いてもらい、実行するように言っています。本当に小さいけれども実行可能な目標です。「メイクをちゃんと落とす」「エレベータでなく階段を使う」「今週中にレポートを終わらせる」など何でもいいのですが、大事なのは「できそうもないことを書かない」ということです。そうして小さな成功体験を積み、自己肯定感を高め、よい生活習慣が身についていくという取り組みです。私も毎回の講義後に、受講票に書かれた目標を見るのをとても楽しみにしています。「おやつは1日ひとつまで」とか「朝目覚ましがなってから10分以内に起きる」とか書かれていて、かわいいなと思っています。学生には、誰にもなりたい自分のイメージがあると感じます。すぐそこにはいけないから、「なりたい自分になる!」を叶えるために、今すぐ小さな行動を起こしてみようと話しています。

先生は母体の栄養状況について、課題意識があるそうですね。

 今、母体の栄養状況が本当によくないんです。栄養の貯蓄がない。妊娠中は血色素は健康でも落ちていくので、もともと不健康だと、さらに落ちて、胎児期成長に影響を与えてしまいます。ヘンなダイエットに走るのは、やせたらキレイになるという意識があるから。
 でも、健康・キレイ・心の状態が前向きになると、学習や就活にプラスになるんです。

これから入学を考えている高校生に一言お願いします

 実は、高校生の方が規則正しい生活や自宅で調理されたバランスの良いご飯やお弁当を食べています。しかし、大学生になると、バイトをしたり、サークル活動などで夜11時ぐらいに帰宅したり、お金が無いからとカップ麺で食事を済ませたり、どんどん不健康な生活になる傾向があります。
 そのような忙しく不規則な学生生活の中でも、菓子パンとジュースよりも、サンドイッチとヨーグルトのように、食品の選択を変えるだけでもずっと健康に近づけます。昭和女子大学には女子大ならではの「健康できれいになる」支援があると思って、学生時代によい健康習慣も手に入れて欲しいと思います。

今後の目標をお聞かせください。

 スマイルプロジェクトに参加して、健康なキレイを手に入れた学生たちはキラキラしています。自分に自信が持てるようになり、就活でも、卒論でも前向きにがんばる学生さんをたくさん見てきました。
 「健康」は幸せの重要な要素です。幸せな人生の基盤である心と身体のための健康習慣を学生時代に築いていってほしいです。そのために、これからも「健康できれいになろう」と呼びかけていきたいです。


戻る