春の特別展

   
 ごあいさつ
 内藤濯(あろう)先生が『星の王子さま』の翻訳を手掛けたのは今から50年以上前、昭和28(1953)年のことです。東京商科大学を定年で退職し、一度は教師の道に区切りをつけたものの、昭和女子大学からの熱心な要請に応じて教壇に復帰し、3年が経過しようとする頃のことでした。70歳とは思えない瑞々しい感性でサン=テグジュペリの心を的確にとらえた内藤先生の翻訳は、胸を打つ物語を繊細で美しい日本語に置き換え、多くの日本人を虜にしました。全世界でベストセラーとなっている『星の王子さま』は、とりわけこの国では多くの人に愛されていて、すでに600万部以上を売り上げています。
 『星の王子さま』には、内藤先生の生涯を掛けての言葉へのこだわりが、平明な美しさとなって現れているのです。
 フランス文学の翻訳者としてつとに高名であった内藤先生は、美しい言葉を口から発することの大事さを思い、本学では朗読会を催し学生に詩の朗読を奨励しました。当時の卒業生で、アナウンサーとなった女性達は異口同音に朗読会の楽しさを今でも語っています。
 内藤先生は、また、翻訳と声に出す言葉を通して演劇人との強い繋がりがありました。そのような出来事としては、80歳の誕生祝いに『星の王子さま』の朗読が著名な演劇人達によって 企画製作されたことが、あげられるでしょう。
 内藤先生の美しい日本語は和歌にも及んでいて、昭和46年には歌会始の召人に選ばれております。
 “内藤濯訳『星の王子さま』”の誕生の地である昭和女子大学において、このような展覧会が開催できたことは大変な喜びであり、 内藤先生の言葉への志が引き続き広く伝えられる場の一つとなることを願って止みません。
 昭和女子大学における22年の長きにわたる教授生活、また晩年の活動拠点として活躍された内藤先生によって、 多くの世に光り輝く業績が生まれた様子などを御覧頂ければ、幸いです。
 平成18年5月
昭和女子大学







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